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ピクセルグリッドの引っ越し 第1回 オフィスの移転を考える

ピクセルグリッドがオフィスを移転した際に考えたことを紹介します。まずは前提となる移転する理由の整理と、それに基づいた移転先のロケーション選定です。

発行

著者 中村 享介 Jamstackエンジニア
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はじめに

2017年10月、ピクセルグリッドはオフィスを移転しました。このシリーズでは、リモートワーク*を採用していて出社の義務のないピクセルグリッドが、どのように考えてオフィスを選定し、そしてどのような決定をしたのかということを紹介します。

*注:ピクセルグリッドのリモートワーク

ピクセルグリッドのリモートワーク自体については、『ピクセルグリッドの仕事術|リモートワークの形態と運営のコツ』を参考にしてください。

リモートワークの会社にオフィスは必要?

リモートワークを採用するピクセルグリッドでは、平日でもオフィスに誰も出社しないということがあります。そんな会社に、そもそもオフィスは必要なのでしょうか?

以前、『ピクセルグリッドの仕事術|通勤時間と働きやすさ』という記事でリモートワークでもオフィスはあったほうが理想的という話を書きました。4年近く前の記事ですが、いまでも考えはまったく変わっていません(前提となる考え方はこの記事にありますので、もし読んでいなければこちらから読むことをお勧めします)。

移転の理由

移転した時点で社員数は18人*。旧オフィスでは一軒家をオフィスシェアしていたので、人数が増えてくると勉強会などで全員が集まれる部屋がなく、また打ち合わせなどに使う会議室の確保が難しくなっていました。

また、シェアしていた会社の設備を使わせていただく形でオフィスを借りていたので、リモートワーク用の設備などを設置したり実験したりという場合に相談が必要となります。そのため、改善までに時間がかかってしまうというのも、もう一つの理由です。

そのほかにも、通勤時間を短くするという意味で、もう少し駅から近い場所にしたいというのもありました。旧オフィスでは3駅を利用できましたが、どの駅からも10分少々かかってしまっていたのです。

*注:社員数

原稿公開時点では1名増えて19人になっています。

オフィスの使い方を分析する

引っ越しすると決めたからには、合わせて他に解決できそうな問題はないか、失ってはならないものはなにかということを分析していかなければなりません。現状でも満足している良い部分、気に入っている部分と悪い部分、改善したい部分を見分けて良い部分をできるだけ残し、悪い部分をできるだけ改善するのです。

そのため、しばらく毎日オフィスに行って、人の出入りやオフィスの使い方を観察しました。

人の集まる水曜日

ほとんどの人が出社するのは、社内の勉強会と英会話レッスン*がある水曜日です。出社する人が多いので、仕事の打ち合わせなども多く行われます。勉強会の時間に合わせて大体の人が出社し、その後は自分の英会話レッスンが終わると帰ってリモートで仕事する人もいれば、そのままオフィスで仕事をしている人もいます。電車が空いている15時ごろから帰宅する人が出始め、19時ごろには大体誰もいなくなるというパターンが多くありました。

* 注:社内英会話レッスン

ピクセルグリッドでは週に一度、英会話レッスンを実施しています。どうして取り入れているのか、その方法などは『英語との付き合い方|英語の向こうにある力』を参考にしてください。

この日の問題としては、すべてにおいて場所が足りないということにつきます。会議室は英会話レッスンと仕事の会議でほぼ埋まっていますし、英会話レッスンも会議室の都合で途中で移動する必要があります。ピクセルグリッドのスタッフは10畳ほどの和室の休憩室で仕事をすることも多いのですが、その休憩室に12人いたりすることもありました。

また、接続人数が増えたため、インターネット回線が遅くなり、仕事に支障が出ることもありました。そうするとオフィスにいても仕事にならないので帰る人が出始めるという状況です。社内にサーバーを持たず*、すべてインターネット上のサービスで賄っているので、インターネットの速度が遅いのは致命的なのです。

*注:社内サーバーを持たない

ピクセルグリッドでは社内サーバーを管理せず、ほぼ外部のWebサービスを利用しています。『ピクセルグリッドの仕事術|社内サーバーを置かない』を参考にしてください。

水曜日以外の平日

水曜日以外の日はというと、プロジェクトの打ち合わせで何人か集まったりというのはありますが、打ち合わせの時間が終わったらオフィスを出てしまう人もいました。だいたい同時にオフィスにいるのは6人程度まで、午前と午後で人が入れ替わったりということが多いようです。

まったく誰もこない日もあり、そういった日はチャットですべての仕事が進んでいます。そうかと思えば、夜のイベント参加などに合わせて夕方ごろにふらっと人が来る日もありました。オフィスは渋谷に近いので、家からイベント会場に向かうより楽なのでしょう。出社して、夜まで静かに仕事するというオフィスの使い方です。

会社としてどうしていくのか

現在の使い方を整理して問題を解決するのはよいですが、今後、数年間で会社をどうしていくのかというのも考えなくてはなりません。それを忘れるとせっかく移転して問題を解決しても、またすぐに新たな問題が起こってしまいます。

どんどん人を増やして拡大していくというのであれば十分なオフィスの広さを確保する必要がありますし、オフィスの維持コストを下げたいというのであればそれに合わせた物件を選ぶ必要があります。

ピクセルグリッドでは急速に人を増やすことはせず、ゆっくりと合う人を採用していければと思っているので*、今回、一気に広いオフィスへという方針ではなく、現状の問題を解決し数年間快適にすごせることを目指しての移転としました。また、もちろん維持コストが下がるのに越したことはないですが、コストは現状と同程度またはそれ以上でもよいと考えていました。

*注:社員数の考え方

会社としてどのように人数を増やしていくのかの考え方は、『ピクセルグリッドの仕事術|人を増やすということ』を参考にしてください。

ロケーションを考える

移転に対する方針が整理できたので、次は具体的にオフィスを探していきました。オフィスの場所については、大まかなエリアで探すことが多いように思いますが、今回、かなりエリアを絞った状況で探しました。それには次のような理由があります。

スタッフの住んでいる場所との関係

ピクセルグリッドは通勤時間を減らすため、オフィス周辺へ住みやすい住宅補助制度を用意しています。また、逆に遠くでも、リモートワークを生かして問題なく仕事ができます。それにより、現状スタッフは、旧オフィスの周辺に住んでいる人と、電車で通勤できる範囲に住んでいる人、新幹線を使わないと通勤できない人がいます。

旧オフィスの周辺に住んでいる人のことを考えると、大きく場所を移すことはあまり良い選択ではないでしょう。せっかくオフィスの近くが良いと思って自宅を引っ越したのに、オフィスが遠くに移動してしまっては意味がありません。電車で通勤できる範囲に住んでいる人はオフィスの最寄り駅が変わると通勤経路の変更で、通勤に時間がかかるようになるかもしれません。

そこで、今回は旧オフィスに近い、原宿駅、北参道駅、千駄ヶ谷駅、外苑前駅、表参道駅、そして渋谷駅のいずれかの駅の近くで探すことにしました。

駅の利便性とホームからの時間

乗り入れている路線数が多い駅のほうが乗り換え回数が少なくて済み、多くのスタッフが出勤しやすくなります。また、クライアントのところへ打ち合わせに出たりする際も、路線数が多い駅の方が乗り換えに時間をかけずに移動することができ便利です。

ただし、複数路線が乗り入れる大きな駅は、駅構内も広く移動に時間がかかります。また、路線数が多いということは、それぞれのホームが離れていることでもあり、使う路線によっては対象の出口までかなりの時間歩くことになります。「渋谷駅1分の物件」でも、ホームから1分で到達するのはまず不可能です。ターミナル駅は構造が複雑なことが多く、また利用者の多い駅は十分な空間が取られていることもあり、どうしても駅構内の移動に時間がかかります。

また、新しい路線は地下深くにホームがある傾向にあり、駅からオフィスが近いとしてもホームからの時間を考えると多くの時間がかかってしまうことが多いです。実際、新しい駅である北参道駅(東京地下鉄副都心線)では、地上入り口からホームまで10分弱かかります。しかし、外苑前駅は路線数では東京メトロ銀座線しかなく、その分駅の構造はシンプルです。改札も2つ、古くからある駅のため地下2階程度でホームです。地上の入り口から1分でホームまでたどり着くことができます。

今回の移転では駅に近づけて移動の時間を減らすというのも目的の一つですので、ホームからかかる時間も考慮に入れました。

今回選んだ駅

最終的に表参道駅に絞って探しました。デザイン系の事務所や高級なブランドショップが多いイメージで、路線数は3路線、地下鉄銀座線や半蔵門線ならホームから地上までは2分程度とそれほど時間がかからず、通勤時間短縮にもなりそうだったのが決め手です。最終的に表参道駅から徒歩4分の場所にオフィスを移転することができました。

駅とイメージ

駅にはイメージがあります。原宿駅ですとアパレル系のオフィスや店舗が多く、千駄ヶ谷駅だと体育館などがありスポーツが盛んなイメージ。渋谷駅だと最近はIT系企業が多いイメージでしょうか。

イメージが定着している業種が、その場所にオフィスを構えると、優秀そうな企業、業績の良さそうな企業に見られます。たとえば、アパレルの会社で原宿が本社というのと、ほかの場所、山手線の中で乗降客数で同じぐらいの駅である巣鴨が本社というのだと、実際の企業がどうであるかに関わらず、だいぶイメージが変わってくるのではないでしょうか。

社内でどの場所が良さそうかと質問した回答として、「原宿から離れたい」「渋谷がよいのでは」「北参道より表参道の方がおしゃれ」「渋谷だと通勤するのにテンションが上がらない」などがありました。

自社に合ったイメージの街にオフィスを構えるというのは、ブランド戦略として理にかなっていると思います。とはいえ、意外な場所にあるオフィスも面白いですし、イメージに合わせた場所でないとダメなわけではありません。

まとめ

リモートワークを採用しているのも、今回のオフィス移転でスタッフの通勤時間を考慮しているのも、スタッフの時間を無駄にしないように気をつけているためです。次回はどのようにオフィス物件を選んでいったのかについて紹介します。

中村 享介
PixelGrid Inc.
Jamstackエンジニア

2009年、JavaScriptの会社として株式会社ピクセルグリッドを設立。 多数のWebリニューアル、新規立ち上げを取り仕切った経験を持ち、情報設計、フロントエンド、クラウド活用、開発フローの効率化を得意とする。 Webをより発展させるため、新しくブラウザに実装された機能の活用事例を数多く生み出しつつ、日々、クラウドサービスを利用した効率のよい制作・開発手法の試行錯誤を続けている。現在の興味はWeb Componentsを使ったマークアップの改善とJamstack。 著書に『WebクリエイティブのためのDOM Scripting』(単著:毎日コミュニケーションズ、2007年)など。ここ数年は書籍の執筆をせず、フロントエンド技術情報メディア「CodeGrid」で精力的に執筆活動を行っている。

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