セレクトボックスの現在とこれから 2025 第1回 セレクトボックスの基本と区切り線

HTMLのセレクトボックスは、デザイン的なカスタマイズが難しいUIパーツですが、改善が進んでいます。今回はセレクトボックスの基本と、最近導入された区切り線の機能を紹介します。

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著者 國仲 義則 フロントエンド・エンジニア
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はじめに:セレクトボックス

HTMLフォームで利用されるパーツの一つに、セレクトボックスがあります。提示した選択肢の中から、ユーザーが選べるインターフェースです。

このパーツは利用頻度が高いにもかかわらず、デザイン的なカスタマイズが非常に困難です。

テキストボックスはCSSで十分な装飾を施せます。チェックボックスとラジオボタンは少し複雑になりますが、それでもHTMLとCSSで調整可能な範囲です。しかし、セレクトボックスはそうではありません。インターフェースのデザインはOSやブラウザに依存し、CSSでのカスタマイズは限られています。

近年、それらを解決すべく新たな仕組みが作られています。この連載では、どのような仕組みが進んでいるのかを紹介します。

今回はセレクトボックスのおさらいをしつつ確認し、新たに導入されて実用可能な「区切り線」を紹介します。

現状でセレクトボックスのデザインをカスタムする

ライブラリなしで実装する定番UI」シリーズでは、第17回から第25回に渡ってセレクトボックスのカスタム実装を紹介しています。この方法はJavaScriptで実装する必要があり、アクセシビリティを考慮する必要もありますが、デザインの自由度は高くなります。キーボード操作への対応が非常に多く、セレクトボックスというものにいろいろな機能が詰まっていることがわかります。

セレクトボックスの基本

セレクトボックスは、HTMLのselect要素で実装されます。選択肢はoption要素で定義します。

プレーンなセレクトボックスの例

<label for="fruit">果物を選んでください</label>
<select id="fruit" name="fruit">
  <option value="apple">りんご</option>
  <option value="orange">みかん</option>
  <option value="banana">バナナ</option>
</select>

このコードは以下のように表示されます。

さらに、項目をグループ分けする機能としてoptgroup要素があります。

セレクトボックスのグループ化の例

<label for="food">食べ物を選んでください</label>
<select id="food" name="food">
  <optgroup label="果物">
    <option value="apple">りんご</option>
    <option value="orange">みかん</option>
    <option value="banana">バナナ</option>
  </optgroup>
  <optgroup label="野菜">
    <option value="carrot">にんじん</option>
    <option value="cabbage">キャベツ</option>
    <option value="tomato">トマト</option>
  </optgroup>
</select>

区切り線の導入

ドロップダウンで項目を選択するUIといえば、OSメニューなどでもよく使われるのをご存じかと思います。その際、OS標準のメニューでは区切り線が使われることがあります。

以下はmacOSのメニューの例です。

このような区切りを、セレクトボックスでも行いたい場合があります。しかし、グループ化は前節で解説したoptgroup以外に手段がなく、「同一のグループだが視覚的に区分けしたい」という場合には手段がありませんでした。

しかし、近年ではhr要素をselect要素の中に入れられるようになり、項目をOSメニューのように区切ることが可能になりました。

コードは本当に単純で、select要素の中にhr要素を入れるだけです。

区切り線を入れたセレクトボックスの例

<label for="food">食べ物を選んでください</label>
<select id="food" name="food">
  <option value="apple">りんご</option>
  <option value="orange">みかん</option>
  <option value="banana">バナナ</option>
  <hr>
  <option value="carrot">にんじん</option>
  <option value="cabbage">キャベツ</option>
  <option value="tomato">トマト</option>
</select>

「バナナ」と「にんじん」の間に区切り線が挿入されているのが確認できます。

この機能は、Chrome 119、Safari 17、Firefox 122以降で利用可能です。モバイルではiOS Safari 17.4です。Android Chromeはセレクトボックスの表示方法が特殊なので、区切り線が表示されません。Android Firefoxは未対応ですが、対応予定のようです。

Android Firefox

Bugzillaではstatusが「assined」になっていますので、対応予定になっているようです。

この機能はoptgroup要素と組み合わせて使うことも可能ですが、その場合はoptgroup内ではなくselectの子要素としてhrを入れる必要があります。

区切り線を入れたセレクトボックス(グループ化)の例

<label for="food">食べ物を選んでください</label>
<select id="food" name="food">
  <optgroup label="果物">
    <option value="apple">りんご</option>
    <option value="orange">みかん</option>
    <option value="banana">バナナ</option>
  </optgroup>
  <hr>
  <optgroup label="野菜">
    <option value="carrot">にんじん</option>
    <option value="cabbage">キャベツ</option>
    <option value="tomato">トマト</option>
  </optgroup>
</select>

区切り線の注意点

もしoptgroup内にhrを入れた場合、ブラウザはどうにかして表示しようとしますが、きっと制作者の思ったとおりにはならないでしょう。仕様でもセレクトボックスの区切り線であるhrselectの子要素となっています。

ダメな例

<label for="food">食べ物を選んでください</label>
<select id="food" name="food">
  <optgroup label="果物">
    <option value="apple">りんご</option>
    <hr>
    <option value="orange">みかん</option>
    <option value="banana">バナナ</option>
  </optgroup>
  <hr>
  <optgroup label="野菜">
    <option value="carrot">にんじん</option>
    <hr>
    <option value="cabbage">キャベツ</option>
    <option value="tomato">トマト</option>
  </optgroup>
</select>

optgroup内にhrを入れた場合、hr直後のoptionのインデントが解除され、グループ化されているかどうかもわからなくなってしまっています。

このような状況を避けるためにも、hrは仕様のとおりselectの子要素として使いましょう。

アクセシビリティ

select要素内にhr要素を入れた場合、スクリーンリーダーは特に区切り線があることを伝えません。現在は視覚的なレイアウト目的でのみ使用可能です。

まとめ

今回はセレクトボックスの基本と、最近導入された区切り線の機能を紹介しました。区切り線は単純な機能ですが、使い方によっては非常に有効な手段となります。ぜひ活用してみてください。

次回は今後期待されるカスタマイズ機能について紹介します。