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AIエージェントを使った開発のまとめ その2

前回に続き、シリーズのまとめとして、AIエージェントを使った開発について考えます。今回は、開発で収入を得ることが難しい時代にどう価値を出すかと、「作りたい」という意欲の大切さについて、筆者の経験をもとに考えます。

(700号)

目次
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前回まで

前回から、シリーズのまとめとして、AIエージェントを使った開発について、次の5つのテーマを取り上げています。

  1. これまでのワークフローを見直す
  2. 自分の領域を広げる
  3. AIの情報を追いかけすぎない
  4. 開発するだけでは稼げない時代に、何で価値を出すか
  5. 「作りたい」という意欲が、何よりも大切になる

前回は、1〜3のテーマを説明しました。今回は、残りの4と5を見ていきましょう。

4. 開発するだけでは稼げない時代に、何で価値を出すか

次は、お金の話です。日々の仕事で、どう収入を得ていくか。

開発の世界では、変化はすでに起きていて、もう過去の話になっていると筆者は感じています。AIが使えるので、アプリのコードやWebサイトの保守を、外部の開発者に依頼しなくなる。ピクセルグリッドのような小さい企業であっても、実際にそういうことが起きています。

AIが質問に答え、作業もしてくれる

また、WebサイトやWebアプリの必要性そのものも、薄れてきているように感じます。当然、AIがその役割を担うからです。残念ですが、このCodeGrid自体についても、そう感じる部分があります。

ただ、これはCodeGridというサービスだけの問題ではありません。技術記事媒体全般に、広く起きていることです。開発について知りたいことがあれば、私たちはChatGPTやClaudeに聞きます。この記事で書いてきたように、開発してから学ぶこともでき、そのほうが効率のよいことは多くあります。自分の場合、旅行の計画を立てるときも、昔はがんばってGoogle検索してあれこれ調べていたものですが、今はいきなりChatGPTに聞いてしまいますね。みなさんもおそらくそうするのではないでしょうか。

これはさまざまな分野で起きていることですが、なかでも開発に関わる仕事は、特に大きな影響を受けているのは明白です。

一方、このシリーズでは、筆者がTakazudo Modularというモジュラーシンセの店(オンラインショップ)を運営していることも紹介しました。こちらのECの分野では、オンラインのセミナーを覗いてみたりしたこともあったのですが、AIが登場する前と後で、根本的な部分は変わっていないように思います。

理由は単純で、商売の中心にあるのは、お店とお客さんとの関係だからです。AIがその関係をなくしてしまうわけではありません。少なくとも、今のところは。告知用のコンテンツを作ったり、お客さんへの返信文を考えたりする作業は、AIで楽になります。この場合のAIは、便利な道具として働いてくれています。

専門分野の仕事も変わっていく

専門分野の仕事とAIについても、最近、気になったことがあります。

1年ほど前、弁護士をしている友人は、「法律の分野では、AIはまだまったく使いものにならない。嘘ばかりだ」と話していました。ところが最近、ある著名な弁護士が、AIによる法律上の判断もよくなってきていて、近いうちに弁護士の仕事そのものが変わるかもしれない、とXに投稿しているのを見かけました。海外の法律についてではありますが、AIの回答の正答率は54%ほどにもなったとのこと(Xの投稿)。54%という数値が高いかどうかは置いておいても、専門知識を要する分野でも、徐々にAIに置き換わっていくのだろうと予感させる話です。

ですが、我々が身を置いているこのソフトウェア開発では、こうした変化はすでに起きた後です。これからどうなるかというより、もう変わってしまった、過去の話という感覚です。実装はAIがやってくれるので、実装作業を請け負うだけの開発者として、自分を売り込むのは難しくなりました。今の時代、サイトもアプリも無限に作れるので、作れること自体の価値は著しく落ちたと言ってよいでしょう。

Web制作やWebアプリ開発では、実装する人の作業コストが大きな要素でした。AIが1時間で実装を終えてしまう時代に、クライアントにどうプレゼンし、どう説得力のある見積もりを出せばよいかは、なかなか難しくなったように思います。ただコードを書くことに一日のほとんどを使うことが許されていた時代は、二度と戻ってこないでしょう。

実装の先に残る価値

ただ、複雑で規模の大きいアプリケーションを作るのは依然大変な仕事であり、それができること自体に価値は(まだ)あると、筆者は考えています。そして、Webサイト自体の意味を考え、真に必要なものを作るということも重要であり、これは普遍です。

かく言う筆者自身も、最近はクライアントに具体的な提案をする仕事が多くなりました。昔ながらのノリで愚直に開発にのめり込んでいるだけでは、仕事として成り立たないという危機感があるのです。そもそも実装自体はAIがしてくれるわけですから、仕事を拾ってくるのは人間の仕事です。そこで、実装云々の話をするのはやめて、クライアントの要望に真摯に向き合い、機会があれば背景にある技術の話もする、というスタンスに変えました。みなさんの仕事ではどうでしょうか。

5. 「作りたい」という意欲が、何よりも大切になる

最後に挙げたいのは、何かを作りたいという意欲そのものが、今もっとも重要になった、ということです。これは、かなり確かなことだと筆者は考えています。

意欲がなければ、何も作れない

今では、開発の進め方そのものはシンプルです。AIとチャットする。以上です。今のベストなプログラミング言語は英語であると揶揄されることがあります。ただし、技術的な理解がいらなくなったと言いたいわけではありません。この点は「技術知識の重要性 | AIエージェントのススメ」や「スキルを使いこなす5:ナレッジスキル その3 | AIエージェントのススメ」で書いたので、ここでは繰り返しません。ここで言いたいのは、自分がその対象にどこまで興味をもっているかが、成果に直接表れるということです。

たとえば、テキストエディタを作りたいとします。こんなやり取りがあるかもしれません。

  • 「Claude Code、テキストエディタを作りたい。基本的な機能を実装して」
  • 「できました。text.appを起動してください。メニューから保存できます」
  • 「ありがとう」

さて、その次にClaude Codeへ何と返しますか?

作っているもの自体に興味がなければ、その先に進めません。開発は、そこで簡単に止まってしまいます。

では、何が必要なのでしょうか。それは、何かを作りたいという「欲」のようなものだと思います。この例なら、「もっとよいテキストエディタがほしい」「既存のエディタの、ここが不満だから解消したい」といった気持ちです。

「欲」のようなものが必要……というよりどうでしょうか。むしろそれ以外に人がやるべきこととして残されているものはないのでは? ぐらいに自分は今感じています。作る気持ちがなくなれば、開発も止まります。逆に気持ちがあればいくらでも実装はAIがやってくれます。

SNSで、フリーランスのデザイナーの方が大量のゲームを作っているのを見かけました。それもかなりの品質で。当然AIを使って作っています。まさに作りたいものがたくさんあって、今それをかなえているという状態に見えます。

読者のみなさんは、AIを使って作りたいものがありますか? 「作りたい」というのは自発的な欲望なので、「作りたいものを見つけなさい」というのもおかしな話です。ですが前回の冒頭で書いたように、経験こそがAI使いこなしの成長を促進するでしょう。事実として、現時点でおかしいぐらいにAIを使っている人は、ほぼ100%、何かしら作りたいものがある人じゃないでしょうか。

クライアントと、どう向き合うか

さて、ではクライアントワークにおける「作りたいという意欲」はどう考えればいいでしょうか。

これまでのWebサイトやWebアプリの開発を思い浮かべてください。クライアントには、作りたいものがある。私たちが依頼を受け、作って納める。基本的には、そういう流れでした。

前の節でお店の例を挙げたように、この関係そのものは変わりません。相手に実現したいことがあり、私たちが提案し、仕事をしてお代をいただく。AIが大きく進歩しても、Web開発の仕事の根本は同じです。

でも、これまでと同じ意識のままで続けられるかというと、筆者は難しいと思います。今はちょっと頼めば、AIが何かしら作ってくれます。私たちが売ってきた「作る労働力」だけでは、AIに頼むのと何が違うのかを示しにくくなりました。というよりも、「作る労働力」にはもう価値がない。ここをスタートラインにすべきでしょう。

では、その前提に立ったら何が必要なのか。筆者は、クライアントの「作りたい」に、こちらから積極的に同調することではないかと考えます。相手が何を実現したいのかを理解していなければ、AIに渡すプロンプトも書けませんし、AIが作ったものの良し悪しも判断できません。

先述したように、筆者は最近、クライアントに提案する機会が多くなっています。その際にはデモを作ります。AIならすぐに作れるので、「ピクセルグリッドではこういうものが作れます」と、最初から作ってもっていってしまうのです。ところが、適当にAIに作らせたものは、どこか違います。「うーん、こういうイメージではないんだよな」となる。そのままもっていけば、おそらく世間でAI slopと呼ばれるものになるでしょう。AIで作った、中身の薄い低品質な作りものです。

では、何がそれを低品質でなくするのか。相手の「作りたい」を理解したうえで、何を作るべきかを示せることです。それが、これからの私たちの価値になるのだと筆者は考えています。

まとめ

率直なところ、開発者にとっては、なかなか生きづらい時代になったと思います。

たとえるなら、これまでは白い紙に自分の手で文字を書いていたところへ、プリンターが発明されたようなものです。そちらのほうが、はるかに速い。私たちは、印刷が終わるのを待っていればよくなりました。悪い知らせに聞こえるかもしれませんし、実際、そういう面はあります。

ただ同時に、AIを効果的に使える立場にいちばん近いのも、開発者であることは、ほぼ間違いないと思います。技術的な背景があり、日々、複雑なことに取り組んできたからです。それは、身体で覚えたような経験でもあります。これから開発を始める人には、同じようには得られない経験です。非技術者が、スキルやCLIを駆使してエージェント群をコントロールするのは、結構ハードルがあるように感じます。その意味では、今は開発者にとっての「ボーナスタイム」であるとも言えるかもしれません。AIスゴイは開発界隈では自明ですが、世間的な認知はこれから広がっていく状態です。

ただし、このボーナスタイムは長くは続かないでしょう。AnthropicやOpenAIも、開発者以外の人がもっと簡単に、もっと効果的に使えるように、AIエージェントを改良しているからです。AIが今便利、の次は、その便利なAIを使ったサービスやアプリが大量に登場してくる……もしくはそういった外部のアプリが不要であるほどにAI自体が進化してしまうか。いずれにせよ、2〜3年後には、ターミナルで複雑なことをする必要も、なくなっているかもしれません。筆者はすでに、ChatGPTのアプリ上で大体のことを済ますようになっており、黒い画面なんて触ることはないという日はかなり近いように感じます。

このシリーズでは、主に開発者の立場から書いてきました。でも、開発者ではない人の立場から見れば、AIはシンプルに「何かを作る力」を与えてくれるものです。細かな仕組みを知らなくても、ゲームやWebサイトを作れるようになりました。これは、すばらしいことです。筆者の近くでも、Webの仕事をしていない人たちが、楽しそうにゲームを作っているのを見かけました。AIが登場する前には、ほとんど不可能だったことです。

一方、開発者にとって辛いのは、AIを前提にした開発への移行を、半ば強いられていることかもしれません。「AIでこんなことができる」「わーすごい便利」、ではありません。AIで開発できるようにならないとこの仕事はなくなるというレベルの変化であるためです。そして、この記事で書いたように、自分が何を作りたいのかを考える、プロダクトオーナーのような意識も求められます。「作りたい欲」をもてと言われます。これは、多くの人にとって簡単な変化ではないだろうと感じています。

最後に、Rails World 2026というイベントの、Railsの作者であるDHHのキーノートを紹介します。

この動画では、Railsのイベントであるにもかかわらず今や全部RustでAIに書かせていて、「AI開発最高」みたいなことを話しています。Rustは人が書くには最悪だけど、今やAIしかコード書かないからRustでいいねという意見のようです。そういう、言ってみればハードコアな開発者の人が、どういう内容を話すかというと、最後はこういうものを作ってるんだ最高なんだという話をひたすらしています。そして、プログラマーはもう不要で、エージェントにプログラムを書かせられる人材がこれからは必要だとも言っています。つまりはボスになれということですね。

DHHのキーノートのスライド
キーノート動画のスライド:暗い背景に等幅フォントで「No more programmers, just people making agents make programs」と書かれている大きな画像

誰もがDHHのようになれるとは到底思えませんし、彼の言っていることは結構極論めいた傾向もあります。ただ、今回のまとめの内容とはかなりマッチしており、そして未だ衰えないエネルギッシュなエンジニアっぷりを感じさせるプレゼンです。

このシリーズのまとめとして、「うん、AIがんばろうね」というように終えることはできないように思います。各々が今までの仕事の仕方をどう変えていくか、どう変えていけるのかを考えないといけない時代に突入してしまったように筆者には感じられますが、いかがでしょうか。

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